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■2007年5月11日発行

繰延税金資産

【キーワード解説】 〜exBuzzwordsキーワード解説より〜
繰延税金資産とは、税効果会計を適用した貸借対照表において、財務会計上当期の業績に反映させることが妥当でなく将来に繰り延べるべき部分のこと。
将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金等に対して税効果を認識した場合に計上される。

 

会計上は将来の期に負担させるべき税額が、税法上は当該期に認識されるため、資産として繰延べることにより、将来の会計上の税額認識に備えるもの。あるいは、将来発生することが見込まれる税額の減額分を資産計上したもの。

http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_375.html


【昨今の状況】
日本航空(JAL)は今月2日に、平成19年3月期の連結業績予想を下方修正し、最終損益が従来の30億円の黒字から162億円の赤字になったと発表しました。
これだけの巨額の赤字に転落したのは、資産の部に計上していた繰延税金資産650億円のうち544億円を取り崩すよう監査法人から指摘を受けたこと起因しています。
実は、最終損益の前の段階の本業の儲けを示す営業利益や経常利益は、予想を上回っており、業績改善の兆しが見えてきたとも言えるのですが、監査法人は、2001年の同時多発テロやSARSといった海外渡航の固有のリスクや原油高、頻発する渡航トラブルといった経営課題をJALが未だ克服出来ておらず、将来的に税金の軽減効果を得られるだけの利益水準に達成しうると判断し得ないとの立場に基づき、取り崩しを指摘した模様です。

 

「監査法人からの指摘により取り崩した」という部分は、「会社としては取り崩しの必要はないと考えていたが、監査法人が取り崩すべきと主張したので、それに従った」と読み替えることもでき、両社の間で見解の相違があったことを暗に示唆しているといえます。

両者の間でどれだけ激しいやり取りがあったのかは想像するしかありませんが、JALに対する金融機関の姿勢が相当厳しくなっている状況下においては、これだけの下方修正を行うことは本意ではなく、渋々従ったというのが本当のところだと思われます。

 

少し以前の話にはなりますが、りそな銀行は2003年3月期の決算において、監査法人から繰延税金資産の取り崩しを求められ、これがきっかけで自己資本比率を維持できなくなり、事実上の国有化を余儀なくされました。
りそなの繰延税金資産の取り崩し処理を巡っては、監査法人と銀行、さらには共同監査を行っていた監査法人同士までもが激しく対立し、挙げ句には担当会計士の自殺という悲惨な事態にまで発展しました。

 

そもそも、繰延税金資産は、「将来、税金の還付あるいは減額を受けれるだけの利益を上げる」ことを前提に計上が認められるものですが、あくまでも「将来の収益」が前提となるため、絶対的な客観基準が存在するわけでもなく、「判断」が介在せざるを得ません。そのため、上記の例のように「判断」を巡って会計士と会社が対立する事態が頻発するわけです。

 

ところで、繰延税金資産が計上できる税効果会計が導入されたのは2000年3月期からですが、当時は不良債権問題に喘ぐ銀行の救済という政策目的として導入が推進されたといわれています。というのも多くの銀行が、繰延税金資産を計上することにより、債務超過への転落を回避し、自己資本比率を維持することが可能になったからです。
しかしながら、皮肉なことに、その後の金融再生プログラムの一環で、繰延税金資産の計上が厳格化したため、今度は繰延税金資産の存在が、りそなを始めとする銀行の経営問題にまで発展することになりました。
JALの問題にしても、繰延税金資産を計上時点においては、会計監査がそれほど厳格ではなかったため、計上が容認されたものの、会計監査の厳格化が叫ばれる中、監査法人の姿勢が変わり、今回の処理に至ったといえます。

 

なお、欧米においては繰延税金資産よりは繰延税金負債を計上することが多いため、日本のように繰延税金資産資産の取り崩しの問題がクローズアップされることは少ないようです。今後は日本においても、計上そのものが認められないケースが増えてくるのではないでしょうか。

 

 

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